魔王木村と勇者石川
「ゲッ」
その姿を見た冬城くんは、王座の後ろに隠れた。
それを追って白山さんまで王の間にづかづか入ってくる。
その様子に、早本くんがオロオロしている。
なんてかわいそうなんだ。
オロオロしすぎて、次見た瞬間大根おろしになってそう。
「冬城、お前魔王様の食事食ったろ⁉」
「えー、いいじゃん。べつにー」
「いいワケねーだろ。魔王様に知られたら………って」
そこで白山さんの目線は冬城の足元にいたフキフキ中の木村くんを見つけた。
「魔王様っ⁉」
木村くんが手を止めて、ゆっくりと白山さんを見た。
「うん。まあ、なったばっかりだし、あれだけど。うん」
白山さんはその口調に恐れをなしたように後ずさる。
「本物じゃないですかっ」
「えっ……と…うん。本物だけど」
「そうそうそうっ。本物よ?」
その発言に蛍と木村くんが首をかしげる。が、冬城がギクッとしたのを見逃しはしなかった。