魔王木村と勇者石川


白山さんは弁解するように言った。


「あー、えっと皆さん。魔王城の七不思議って知ってますか?最近出来た噂なんですけど」

「あー、あるね」
「知ってるーるけど」


蛍は木村くんを見ると、木村くんもこちらを見ていた。

なんだろう?

七不思議の噂の一つは木村くんであることを知ってるの、バレちゃったかな。


などと、勘違いをしている蛍だが、木村くんも同じことを思い、口を閉ざしていることなど知らない。


「その一つに、坊主でクソ生意気な魔王が夜に調理場に現れるってあるんですよ」

「………」


それもう七不思議じゃなくね、なんて誰もが突っ込みたくなるよ、それ。


「まあ、木村の姿見ること普段ないから、騙されるかもかもねー」

なんて、言って見るけど、それがマズかった。


間違っても、掃除系引きこもり魔王なんて言っちゃいけなかったんだ。



「いやー、まあ俺存在感ないし。うん」


ごめんなさーいっ。全力で土下座だわ。

そんなこんなでドタバタしていると、ふと思い出したように白山さんは慌て出す。


「って、やばっ。蛍先輩。冬城が今回盗んだのって___」


「失礼しますっ」



突然の若々しく礼儀正しい声。

それに、白山さんの言葉は飲み込まれ、場の誰もが扉の方を振り返った。


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