魔王木村と勇者石川
少し歩くと、露店のたくさんある通りに出た。
白山はどうやら有名人らしく、次々に声をかけられる。
「あら~、静流ちゃんじゃない。魔王様はお元気?」
「はい、元気ですよ。」
「おう、白山の嬢ちゃん。よかったらこの果物持っていきな。」
「ありがとうございます!」
ついでに勇者石川にまで声がかかる。
「あれ? 見慣れないお兄ちゃんだ~」
「おら、兄ちゃんもこれ食っていきな」
「え、いえ、俺はいらな……」
魔王領は活気に溢れていた。
賑やかな声は止まる気配がない。
結局受け取らされた果物は、意外にも美味しかったらしく、石川は素直に一つ食べきっていた。