魔王木村と勇者石川



そんな調子で歩き続けて。

石川が、俺はこんな所で何をしているんだろうと考え始めたころ。

 
「あ、もうすぐお城ですよ。」
 
と、白山が前方を指さした。


そこには要塞然とした厳つい建物がひとつ。
 
 
「アレが魔王城です。」
 
「……城、というのはもう少し華やかなものじゃないのか。」
 

なんとも言えぬ表情の石川に、白山はちょっと遠い目をする。

 
「あー、まあ、今の魔王さまの趣味ですよね。」
 
「へぇ……ん? 今のって言ったか?」
 

一瞬、普通に受け入れかけた石川だったが、何か引っかかりを覚えたらしい。
 

「まさかとは思うが、代替わりのたびに外装が変わるわけじゃないだろうな?」
 
「そうですよ。魔王城の七不思議の一つです。内装も少し変わりますね。」
 

特に気にしたふうもなく答える白山。

彼女にとっては当たり前のことなのだろう。
 

「でも、今回はそこまで大きな変更は無かったですね。建物は似たような感じですし。」
 

説明をしながらも足は止めず、とうとう城の敷地内に入った。
 


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