魔王木村と勇者石川
魔女同士の密かな楽しみがやっと終わった直後、もっと言えば魔王城の蛍の水晶玉からの迷の顔が消えた瞬間だった。
「蛍さん、もうそろそろ寝ないと駄目だよ」
「わっほいっ!」
木村がぬーっと現れて、驚きのあまり変な声が出た蛍は、そんな自分に驚いて水晶玉を床に落とす。
パリーン。
「………」
無言でその惨状を見られて、ばつの悪い魔女の蛍。
えへへーと笑って見せると、木村が眉を潜めた。
木村くんのムムム顔キターーー!
思わず机をバンバンしたくなるのを我慢した蛍は、ポケットに素早く手を突っ込み、マジックカメラを準備。
迷も白山も、木村のこの顔には喜ぶに違いなかった。
二、三枚隠し撮りした後、蛍はホクホクしながら木村に今さらながらに聞いた。
「そういえば木村くーん。いきなり現れるなんて驚きマックス、マックス。こんな時間に木村魔王様が何故に城を徘徊してるの?」
部屋のドアから顔を出している魔王様は、この魔女の癒しであるに違いはないのだが、こんな時間にぬっと、しかもタイミングよく現れるとやはり驚く。