魔王木村と勇者石川
「えー。………だって今日俺この城の一応王様になったじゃん。やっぱりみんなより先に寝るのはどうかな、とか…………うん」
「おっおう。でも、夜更かししたい人もいると思うし(ここに)、何人ここで暮らしてると思ってるんだだだ?寝れないよー、木村くん」
「あー、うん」
「だから木村くんこそ、ちゃんと寝なくちゃいけないよよよ」
「………なんか、ごめん」
いつのまにか真剣モードに入ってしまった蛍はハッとした。
木村の声が段々と小さくなってるよよよっ………!
蛍はため息をついて、これ以上は言うまいと慌てて口をつぐむ。
木村は落ち込むと、些細なことでもずっと引きずるからだ。
全く卑屈な可愛い奴め。
と心の中で机をバンバンする蛍であった。
その間にすっと部屋に入ってきた木村は黙々と割れた水晶玉の破片を拾い出して、蛍も慌ててしゃがんだ。
その後、二人で黙々と水晶玉の破片を拾うのだが、蛍が一個拾う間に木村が三つ拾うのだ。その癖怪我もしない。
木村は女子顔負けの器用さを持つ。
羨ましいぜ、この野郎っ。
なんてガサツ代表蛍は心の中で呟いて見る。
大体こういうときの蛍は、自分の無力を呪っているのだが、それはいつものことなので語るほどのことではない。
………ないなーい。