魔王木村と勇者石川
「なっ、どっどうしたの?」
料理はほとんどぶっ飛んでいて、部屋中が黄色い霧に覆われている。
空気がイエロー過ぎて、三十センチ前が全く見えない。
「あっ、水谷ちゃんがお品書き見たら急にこうなっちゃって__」
「でっ、でも、お品書きに百合添えって書かれてたんです~っ」
鶴野くんの声を遮って、水谷ちゃんがヒステリックに言う。
「は?」
「そっ、それは百合というのはなんというか、比喩というか__」
「私たち、百合を食べようとしてたんですよ~っ」
その時、不意にドアの開く音がした。
「あのスゴい音聞こえたんですけど大丈夫__じゃ、なさそうですね」
「うん、早本くん。勇者来た?」
「あっ、ちょっと見てみます」
再びドアの閉まる音がする。
その直後だった。
『あああああああ!!!!』
廊下から早本くんが叫んでいる声が聞こえた。
どうしたんだろう?