魔王木村と勇者石川
蛍はそう言って、床を這う。
のろのろ。のろのろ。
これ、一向に進んでいる気がしない。
それに、正直料理の残骸が酷すぎて、こんなことはしたくない。
だがしかしだ。
木村くんの鼻のためなら、我慢して見せようではないか。
そして蛍は数分後に、壁らしきものにぶち当たった。
それを頼りに立ち上がると、変なものを掴んだ。
「あっ、これは冬城くんの頭だ」
私にでも分かる。
だって、坊主はここに冬城くんしかいない。
ということは、ここは王座だから十歩右くらいに窓があったはずだ。
蛍は一歩右に踏み出した。
「おう」
「あっ………」
蛍の足が何かを踏んだ。
「蛍さん、手踏んでる」
「わっ、木村くん⁉」
踏んだのは木村くんのフキフキしてる手だったか。
確かに王座の下は、木村くんのフキフキスポットだから、あらかじめ注意すべきだった。