魔王木村と勇者石川
「ごめん、ごめんよ。跨ぐよ。おっ……あっあった!」
今度こそ窓の感覚に行き当たって、それを開ける。
「はーーー」
これほど、達成感のあったことは他にない。
一息ついて振り返ると、イエローはだいぶ緩和されて、視界はだいぶクリアに見えるようになっている。
けど、蛍の目に見たくないものまで映る。
「白山さん、この惨状はありかな」
「無しですね」
「やっぱり?」
「はい」
食事が飛び散ったせいで、スゴいことになっている。
せっかく飾り付けた鶴や、歓迎勇者様の文字もグッチゃグッチゃだ。
「木村くん、もう王座のフキフキはいいよ」
自分が呼ばれたのが分かったのか、木村くんがマイペースに蛍の方に向いた。
「え?」
ちくしょう。
意識はこっちに向けるのは成功したが、手だけは王座を離れずフキフキしてやがる。
それに、どうやら一連の流れを全く聞いてなかったらしい。
「だから、勇者が来たんだって」
「え?」