魔王木村と勇者石川
「い、石川くん?」
かけた声が不安げになったのは、石川の声があまり明るいとは言えなかったからだ。
いや、正直に言おう。
低かった!怖かった!
呆れてる!?怒ってる!?
何も言えないまま石川の動向を見守っていると、石川は無言で歩き出した。
石川は迷うことなく、未だフキフキと楽しそうに玉座周辺の掃除をしている魔王の方へ歩いていく。
きっと、先ほどの蛍と迷との会話でそれが魔王木村であると察したのだろう。
「おい」
ああああああああああああ!!
魔女二人は身を寄せあって縮こまる。
なんでって、……
怖いコワイこわいんだよ~!!
石川くんの低い声が~!
「ん?」
周りがみんな怯えているというのに、一人動じず、声をかけられてから初めて顔を上げた木村くん。
さすが魔王さまでございます。