魔王木村と勇者石川
「じゃ、魔王木村くんが良い奴ですよーって、石川くん。人間の偉い人にさ、言ってくんない?」
気を取り直して石川くんと木村くんの間に割り込む。
そんな蛍のほうに視線を移して、返事をしてくれる石川くん。
「あ?……まあ、別に良いけど。って、あんた誰?」
ガックン。
あー、そうだった。
私は普段から石川くんのストーキングをしていたけれども、石川くんは私のことなんて全く知らない。
「あー。石川くんは私と会うの初めてか」
「そうっすね」
素っ気なく答える石川くん。
ま、ソウデスヨネー。
石川くんからしてみれば、知らない奴にさっきなんか命令されて、ウザいし気持ち悪かっただろう。
なのに、“まあ、別に良いけど”とか、本当に優しいんだな。
蛍はそんな石川くんとまずは知人くらいにはなりたいもので。
これは、第一印象が大事。
これを間違ったら、一生石川くんとはストーカーとストーカー被害者にしかなれないっ………!
頑張れ、蛍っ。
「迷の親友、蛍だよよよ?」
一瞬にして、場がバキバキと凍る音を蛍は聞いた気がした。
そして、石川くんが聞こえない声で何か呟いた。
「………また、ヤバイ奴か」