魔王木村と勇者石川
「え?」
「やー、何でもないっすよ」
軽く手を振って視線を逸らしながらはぐらかす。
なっ、なんて言ったんだろうか?
私の第一印象は?
「なに?」
観察するように石川くんを見ていた蛍に、我慢しきれなくなった石川くんが言う。
聞きたい。
私の第一印象をっ………!
でも___
「や、…よっよろしくー」
小心者蛍は怖くてそんなことは絶対、一生聞けない。
代わりに手を差し出すと石川くんはそれを無視する。
「………」
すごく胸が痛い。
「じゃあ、他のメンバーも紹介するよ」
気を改めてそう言うと、石川くんの顔がひきつる。
「えっ………や、結構」
片手をあげて石川くんは、チラリと辺りを見渡しながらそう言った。
それは多分、王座に座る冬城くんとか、足生えた百合とか、そんなのを見たからだろう。
可哀想に。
あの子たちの第一印象って、もしかして最悪なんじゃ………。
そう同情する蛍は、残念ながら自分が一番最悪なことに考えが至らなかった。