魔王木村と勇者石川
「そう?みんな見た感じはアレだけど、中身は普通だよ?」
みんなへの同情心で石川くんにそう再度聞いてみるけど、
「まあ、見た目は普通で中身ヤバイよりは良いわな」
「えっ?そんな人いる?」
「ああ、目の前にな」
そう言うので蛍は振り返ってみる。後ろにはなんと、
「鶴野くんっ⁉」
「あ?」
「鶴野くんはちょっと百合が好きなだけで、やばくない、やばくない」
「ほう」
と、あくまで動じない石川くん。
よっ、ミスタークール。
「じゃ、俺は帰ろうかな。ここでの用も済んだことだし」
「えっ………」
クールは良い。すごく良い。んだけども………クール過ぎたっ。
それは困るっ。
「ダメダメ。まだイベントがあるのだよっ」
蛍のその言葉に固まった石川くんは、ため息のごとく台詞を吐く。
「すごく帰りたい」
あれ、逆効果?
「ダメだよ」
「ガチャ回したい」
「分かるー」
帰りたい旨を淡々と述べる石川くんに同調したのは迷だ。
いやいや、迷さん。
人間の国でいくら素晴らしいものがあったとしても、ここは___
「だろ?じゃあ、帰ろうか」
否定すべきなんですよ、ねぇ。はい、そうなんですよー。
もうっ。
「…俺もやりたい」
だから、何でまた___
って、あら?
我らが木村くんも………あれまあ、急展開だわ。