魔王木村と勇者石川
「んーじゃ、魔王。お前も来い。説得もその方がしやすそうだしな」
「えっ…いいの?」
「あーーーっ!良いも、クソもねえよ。大体、この状況がおかしんだっつーの。俺は大体、魔王にアプリの紹介しに来たわけじゃなくてだな。あー意味わかんねぇのはこっちだっ。なんで、お前みたいなヤツが魔王なんてやってんだよ」
「………なんか、ごめん」
怒濤のような石川くんの台詞を噛み砕く木村くんは、眉をひそめている。少し不安げな表情だ。
そんな可愛い表情を直に見た石川くんは、視線をそらす。
「いや、怒ってないからっ!」
「え?」
突然の石川くんの宣言に、首を傾げる木村くん。
「だから………あーーーっ、くそっ。言わせるな。魔王がなんでお前なのかは分っかんねぇけどな………」
石川くんは半分ヤケクソ気味に、木村くんを睨みつけた。
「お前のことは嫌いじゃねーよ」
一瞬の沈黙の後、謎の声が上がる。
「うっきょーーーーっ」