魔王木村と勇者石川
魔女のたくらみ
興奮する二人をよそに、木村くんと石川くんは諦めたように話を進める。
少し話したあと、
「じゃあ、行ってくるね」
木村くんは通常運転な顔してるけど、結構ノリノリらしく、そう石川くんに告げる。
「は?早くね?」
「そう?」
「だって、どうせ何日かかかるし。っていうかな、俺は疲れてんだよ」
「お疲れ様」
「おう。もっと我をいたわってくれても良いぞ」
「………」
すっかり二人の世界が出来ているようだ。
って、出発前にどうしてもやりたいイベントがまだのこってるんだった。
「鶴野くんっ」
「はい~」
キリッとした声を作った蛍に返事をしたのは、のんびりとした可愛い声。
「…いや、水谷ちゃんじゃないし」
「鶴野くんと私はセットじゃなかったんですか~?」
「いや、なんかもう、どうでもいいけどさ。とにかく鶴野くんに頼みがあって」
「はい、なんでしょう?」
「例のブツ、かもーん!」
その言葉に、鶴野くんは答えた。
「例のブツとは?」
………そこは“ただいま”って言ってくれないと、鶴野くん、蛍はカッコつかないんだけども。