魔王木村と勇者石川



「じゃあ、行ってくる」

木村くんが言う。
どうやら、今日中に行くことに決まったらしい。

しかし、石川くんが疲れているのに強行出発するなんて、木村くんらしくない。




いつも気にしすぎなくらい、他人のこと気にするのに。





まあ、なににせよ、早めに準備しといて良かった。



「はい、このリュック」

「あっ。なんか、ごめん」


「ううん」


そう蛍は首を横に振って、木村くんに既に魔法で軽くしたリュックを渡した。隣では迷が石川くんに木村くんの好物の詰まった重いリュックを渡している。


思わずまだ何も起こってないのに、顔がニヤケた。


そうするうちに、迷は軽くする魔法を解いて、石川くんにそれを背負わせる。


「うっ」


石川くんがあまりのリュックの重さに膝を折った。


「えっ、どーしたの?」

迷が白々しく聞く。その間蛍はマジックカメラを迷に負けず劣らずな手つきで回していた。



「なにって、このリュック__」

重た過ぎる。

そう言いかけて、石川くんは同じように手渡されたリュックを背負って平然と立っている木村くんを見た。



石川くんは唖然と木村くんを見つめた。



「ん?」

石川くんと目があった木村くんが、事情を知らないために、不思議そうに首を傾げる。





「どうかした?」



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