魔王木村と勇者石川
「そしたら、なんと! 次の勇者が分かりました~!!」
パチパチ~、などと楽しそうに話す迷。
周りの空気など全く気にならないようだ。
「して、それは誰なのだ?」
早く答えろと言う王に対し、迷は簡単に答えた。
「石川くんでーす。」
「はぁ!?」
間髪入れずに入ったツッコミは石川くん本人のもの。
最近登城にも慣れてきて、この会議にも参加していた。
「それは本当か。」
「もちろんです。」
王の念押しに大きく頷く迷。
もちろん、大嘘である。
「待ってください、王様。俺は……」
「謙遜はよい。期待しておる。余のため、またこの国のために尽力してくれ。」
迷が言うならそうなのだろうと、否定しようとした石川の声をあっさりと切り捨て、厳かに言った王は、ずいぶんとスッキリした顔をしている。
先ほどの沈痛な面持ちとは大違いだ。
そして、石川はと言えば、驚き過ぎて、何も上手い言葉を返すことが出来ないまま。
流れに流れて、最後には。
「この国を守るため、魔王城へ赴き、尽力してまいります。」
と恭しく応えたのであった。