魔王木村と勇者石川
どこからどう見ても、人間の国に攻め込もうとする魔王を、勇者が一緒に飛んで懸命に止めているように見えるのだ。
いや、人間の心のフィルターのせいではあるのだが。
「あ」
のほほんと空を眺めていた誉が、何かを見つけたかのように、声をあげた。
「ん? なんかあった?」
「あれ、迷先輩じゃないですか?後ろの人たちは知りませんけど。」
パタパタと飛ぶ物体が三つ、魔王と勇者の後ろに見える。
誉はそのうちの一つの上に、迷がいるのに気づいたようだ。
「ん? あれってノートだよな?」
「ノートですね。」
冷静な声で誉が言う。
「でかくないか?」
「でかいですね。」
変わらないトーンだ。
特に驚いた様子もなく、普通に手で庇を作って空を見上げ続けている。