魔王木村と勇者石川
「迷さんがノートに転がって飛んでるように見えるんだが。」
「まあ、その通りですね。たぶんそうやって飛んでるんですよ。」
「……。」
鎌田くんはとうとう黙ってしまった。そして、空を飛ぶ人々を眺めながら考えた。
結果、勝手に納得した。
そういうものなのであろう、と。
誉は迷に師事する魔女見習いである。
その彼女が驚いていない。
つまり、特別なことではないのだろうと判断したのだ。
こんなこともあるのだろう、魔女の迷ならばこういうことも可能なのだろう、と勝手に納得したのである。
「あ、そろそろ到着しそうですね」
「ほんとだ」
「あれ、しかもピンポイントにここに向かってきてません?」
そう、誉が言ったときには、鎌田くんの目の前には自転車と、その自転車に跨るヘルメットかぶった魔王がいた。
次いで、巨大な折り鶴が降りてくる。
もちろん、その上には勇者石川。
「あ、こんにちは。」
「あ、はい。こんにちは。」
魔王がヘルメットをはずし、鎌田くんに気づいて挨拶をした。
なんだか普通に、しかも軽くぺこりと頭を下げながら挨拶をされたものだから、つい鎌田くんも普通に挨拶をしてしまった。
「なんでこんなに和やかなんだ……」
と石川が呟き、誉は少し不思議そうな顔をしている。