Shadow princess~カクサレタ ヒメ~
普通の生活
冷たい水に体を打たれる。
この時間が好きで、この感覚が好き。
夏の暑さのせいでボーッとしていた頭も今は
ハッキリしている。
水滴で曇った鏡からでも見える。
鎖骨のあたりから胸の上にかけて伸びる、
生々しい傷跡。
「消えちゃえばいいのに...。」
でも、怖い。
この傷跡が消えれば私は捨てられる。
離したくないの...、あの子の物になって欲しく
ないの...。
「お願いだから、あたしの気持ちに気づいて
よ...」
力なくつぶやいた言葉は、決して誰にも聞か
れちゃいけない。
マシオ
それが、私が‘’磨汐‘’にできる唯一の償いだか
ら。