同居人は国民的アイドル
「………じゃあ」
後ろから少し震えた声が聞こえた。
振り返ろうと思ったけど、結局背を向けたまま声だけ聞くことにした。
「じゃあ………ずっと騙してきたってこと?
ほんとの自分を出さずにキラキラアイドルを演じて、ずっとファンを騙してきたの…?」
騙した?
いや、でもたしかにそうかもしれない。
騙したつもりはなかったけど、よくよく考えたら俺がやってることって騙してんのかも。
「まあ、そうなんじゃね?」
なんかめんどくさくなってきて、投げやりにそう答えた。すると。
「………最低!!!」
鋭い声が後ろから聞こえて、激しい足音が遠ざかっていくのも聞こえた。
後ろを振り向くとやっぱりもう姿はなくて。
「同居早々喧嘩するとか………」
呆れて呟いた俺のひとりごとに応える声もない。
まじでお先真っ暗。
そう思った俺はあながち間違ってはいないだろう。
こんな、最悪の形で同居が始まったんだから。