* KING *
昼御飯を食べた後は SHOPの上の階にあるオフィスに連れられた。

「ねぇ 杏はずっと本社にいるつもり?」

どういう意味?

「あっ…まだ内緒なのね。何でもないわ…」

慌てて何かを隠す圭さん。そんなに慌てるのは何故なのかな?

「圭さんは COLORの立ち上げが終わった後は やっぱり此処に戻るんですよね?」

「そうね。杏も一緒に来たい?」

う~ん、私はパタンナーだし、ここだと ちょっと緊張ばかりしちゃう…

「素敵なお誘いですが、人には適材適所がありまして…私に此処はハードルが高く無理ですね…」

「クスクス…杏はまだ外の世界に出てないから わからないのよね。大丈夫よ。何とかなるものなのよ!」

圭さんは海外で仕事をした経験があるし、私とはレベルが違い過ぎる。先輩だったら全然余裕なんだろうな…

「圭さん前から聞きたかったんですが 先輩とは何処で知り合ったんですか?」

「凱人から聞いてないの?」

「はい。先輩の師匠とだけしか知りません。」

「そう…凱人はね自分の事は語らないのよ。だから 私からも話せないわ…だけど、少しだけなら。

私がパリで働いていた時に 凱人が来たの。服の知識も何も知らない状態なのにね。

凄いでしょ?情熱だけで 会話も出来ない癖に飛び込んで来たの。」

「先輩はやっぱり変人ですね。だけど先輩らしいです。」

「そうね…一年間だけど 私の下に付いて勉強してもらったの。」

「私も学生の頃 パリに留学とか夢見た事あったんですけど、夢見るだけで行動には移せませんでした。」

「普通は夢見るだけ。だけど凱人は一年間の短い間だけど、多分人より何倍も働いて努力したから 今の実力があると思うの。

まぁ人としては ちょっと難ありだけどね、それはどうしょうもないわ。

今話した事は内緒にしてよ。私がお喋りみたいになっちゃうから、杏、お願いね。」

「わかりました。私先輩を越えるとか、恥ずかしくて これからは言えません。でも先輩には負けたくない。う~ん…どうするべきなんでしょうか?」

「フフ…杏は本当に負けず嫌いなのね。でもね、個性は勝ち負けなんてないと思うの。
だからね、あなたが思う素敵を ずっと追い求める…それでいいのよ。

それが、日本でもパリでも 世界は自分の中にあるんだから。ファッションに国境なんてないの…」

「///圭さん…目から鱗です。私、圭さんをこれから崇拝してもいいですか?」

「///もぅ可愛い。ねぇ今から本社に帰らない?その言葉 凱人に聞かせたいわ…」

ぐいぐい腕を引っ張られ、SHOPに戻り、元着ていた服に着替えて 本社に戻る事になった。

圭さんは行動力が普通よりある。なので、私は振り回されるだけであった。



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