* KING *
「口が上手って良く言われるでしょ?竜野君?」
「イヤイヤ 杏果には口では負けそうなんだけど?」
「私 そんなに?百瀬チーフにも 言われた事あるんだ…」
「逆に百瀬さんに勝つとか あり得ないんだけど。杏果強者だわ…お前格好いいな…」
「そっか、私百瀬さんを鬼、圭さんを悪魔って 本人にバンバン言ってるんだけど…格好良かったんだ?」
「はぁ?鬼に悪魔って?ここには小悪魔がいるから…流石COLORチーム 極めてるな…アハハ…」
「誰が小悪魔よ…失礼しちゃう!」
「まだ誰にも捕まってないんなら…」
じっと見つめる竜野君。
「ほら 電車来たよ。」
話をはぐらかそうとしてたのに…
「ねぇ俺 本気出していい?」
グイッと腰を抱かれ 耳元で囁くイケメン攻撃の 慣れないシチュエーションにクラクラしながらも言った。言ってやった…。
「ごめん。私ね予約入ってるの。当分あなたの順番回って来ないけど。それでもいい?」
「アハハ…予約入ってんの?それって誰?」
キラリと目が光る竜野君。
「そんなの教えない。私が杏果って呼んで貰いたい人は世界でたった1人だけ。」
「それは 俺じゃ役不足って事?」
「そうだね。私がずっと勝ちたい人で ずっと追いかけたい人。だから私やっぱり一人で帰るね!じゃあね お疲れさま。」
電車の扉が閉まる瞬間に スルリと飛び乗り扉がスッと閉まる。
私と竜野君の間にある ガラスの扉…バイバイと手を振って ニコリと笑った。
今無性に先輩に会いたくなった。
今日は自分の家には帰らずに 先輩のマンションへ向かおう。
先輩 私の事…1人の女として見れなくても人間としては認めてくれるんでしょ?
だから…やっぱ側にいさせて欲しい…
願いは小さく ズブズブと想いだけが深く埋もれていくのであった…