* KING *
朝起きると 私が借りている先輩の部屋のベッドの中にいた。

昨日の酔った後の記憶があやふやで 何か忘れちゃダメな事があったような ないような
うやむやだ。

部屋を出ると ソファーに先輩が座っていて いつも通りの態度でいる。

「おはようございます。先輩は休みの日も早いですね。」

「お前がだらけ過ぎなだけだろ?」

「そうかな?休みの日くらい、ゆっくり寝たいじゃないですか?」

「お前 やっぱ男できないはずだ。」

失礼極まりない言葉の暴力に唖然となる。

「可哀想な杏 喜べ。俺が仕方なしにデートに連れて行ってやろうか?俺とデートなんて予約の取れない店以上にレアだと思うけど、行きたい?」

何だかものすごく上からの態度だけど、心の中では小躍り状態…。

えっ。超絶行きたい、デートしたい、先輩と夢のような時間を過ごしたい。妄想だけが勝手に動き出している。

「何だか本当に可哀想な私。だから今日1日 先輩が私を可哀想な人じゃない様にして下さい。」

「何だそれ?ハハ…出掛けるから、早く用意しろよ…」

顔がおかしな事になる前に サッと動いて洗面所に行く。鏡にだらしないニヤニヤした私が写っているじゃないか…

落ち着け。ただ先輩がデートって言っただけ。多分 普段と変わりなく横に並んで歩くだけじゃないの?

それでもバクバクと心臓がなり、早く用意をしなきゃと思うのに、手が震えて中々思う様にならない。

「先輩、私が楽しいと思う様な 素敵な場所を考えて下さいね。つまんなかったら、帰っちゃいますからね。」

と、わざと大きな声で洗面所から先輩に声を掛ける。

「杏 あと10分したら出掛けるから、早く用意しろ…」

出たよ…気分をブレイクするのも先輩で、私は苦笑い。

「…って言いながら 待ってくれるんでしょ?」

本当は優しいくせに。

意地悪な言葉の裏側に いつも隠れた思いやりを見つけ 先輩どこまで私を惚れさすの?

試してる?

それ狙ってる?

無自覚で半端ない先輩が やっぱり好きで仕方がない…



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