* KING *
車が止まり駐車場に車を止め、着いた場所は…人が1人と通っていないシャッターが閉まっている店ばかりの閑散とした商店街。

先輩の後ろから着いて行くと、1つのシャッターが閉まった店の前に来た。10㎝くらい下が空いてる?

先輩は迷いなくシャッターを上に上げる。

「杏店の扉を開けてくれ。開くから。」

ええ~と思いながら 扉を開けると、普通のカウンターだけの店があり、店の中は満席。

「凱人久しぶり。あれ?彼女か?」

店の大将らしき人が 先輩に話掛けて来た。

「あ~彼女じゃない。あれだ、仕事仲間。いつものまだある?」

「ああ、ラスト2杯。タイミングギリだな。ちょっと待ってろ、そこ座ってて。」

先輩の知り合いに会わせるとか、これかなり心を許してくれているの?

どういうつもりなのかわからないけど、席が空きカウンターの真ん中に座る。

「凱人 お前また行くのか?」

「流石…よくわかったな。」

「近い内に家飲みにするか?」

「ああ、また連絡するな。」

カウンターに置かれたラーメンは 今まで食べたラーメンで一番美味しかった。

「杏、俺はこの味が一番なんだけど、お前どう?」

「いやいや、私の中で生涯1と言い切れる程の美味しさです。」

「良かったな瑛人。杏の口に合って何よりだ。」

「先輩のお友達なんですか?」

「いや、兄だ。」

「は?嘘?」

「だろうね、凱人と俺 母親違いだから似てないんだ。それにこいつが人連れてくるなんて初めてだよ。俺は凱人の兄の瑛人。よろしくね。」

「こんにちは、私は安藤 杏果です。百瀬さんは高校も同じで先輩なんです。」

「へぇ、俺も同じだよ。杏果ちゃんの先輩だね。」

ニコリと笑う先輩のお兄さんは、先輩とは似ていないけど、別タイプのイケメンさん。

「杏、食べたら行くぞ。ここ地味に予約制なんだ。だから次の人が待ってるはずだ。」

「わかりました。お兄さんご馳走さまでした。」

「ああ、またおいで杏果ちゃん。凱人またな。」

「じゃあな。」

先輩には兄弟がいたんだ。しかもお母さんが違うと複雑な…

私は先輩に近付く事が 何処までなら許されるのかな?

先輩の謎に包まれたプライベートは、中々紐解くには難しく まだわからない事ばかりなのが堪らなく寂しく感じた…





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