* KING *
昼になり素早く会社を出て 圭さんと近くの店に行く。

「今日は結局 凱人戻って来なかったわね。杏は凱人から何か聞いている?」

「いえ何も聞いていませんが、何かあるんですか?」

「そうね凱人にとっては よい話なんだけど、今だとどうかしらね?とりあえず、何食べるか 決めちゃいましょう。」

圭さんの話から 先輩に何か起こるみたいだ。それも早急に?

「私にまだ話してくれないのは 何故なんでしょうか?」

「うん…そうね。話したらリアルに事が運んでしまうのが嫌なんでしょ?あの男も、見掛けに寄らずチキンだったなんて驚きよ。」

圭さんの話もイマイチわからない。

さっき頼んだランチが来た。流石 圭さんの知っている店だけあって、上品で美味しい。

だけど、多分普通のメンタルの時に食べたら もっと美味しく頂けたはず。何故か 圭さんが話したがらない理由が、私には何となくわかってしまった。

先輩が言っていた この前の話、「俺がいなくても 大丈夫?」とかデートには連れて行けないって事は───。

どうしょうもない不安が押し寄せ、自分の気持ちの整理さえわからなくなり、私は圭さんの前で涙が勝手に流れた。

「ほら杏。まだ何にも聞いていないし、あなたがどうするか、どうしたいかもわからないじゃない。だから そんな泣いたりしないで。ねっ。」

優しく頭を撫でる圭さん。

この手が先輩だったら良かったのにと、また先輩の事しか考えられない私に 自分でも困る程 ぐるぐると混乱するばかりであった。





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