* KING *
バクバクと 心臓がやたら大きく聞こえている。


「圭 この前に話していたあの話は 来月末から始動となった。」


「へぇ随分と引っ張るじゃない?珍しい事もあるのね。凱人の性格上、今月中だとばかり思ってたのに。よく上を納得させたわね。」


「ああ、中々話が難航したんだが、問題ない。」


「あの…私には全く訳がわからないのですが…。先輩 どういう事ですか?」


「来月末から俺はパリに行く。向こうで出向となったんだよ。


前々から話はあり、COLORブランドの事もあるし、引き延ばしを無理にしてたんだよ。」


前に まだ無理とか話してたのは この話だったの?え?それじゃあ、先輩はもうすぐ海外に行っちゃうって事?


「もぅ凱人。杏びっくりし過ぎて固まっちゃった。何で何にも話してなかったの?」


「いいだろ別に。杏は俺の下僕だし パリと日本はそんなに離れてないだろ?」


はぁ?離れてない訳ない…。やっぱり先輩にとって私は それだけの存在だったんだ…

そっか…あと1ヶ月で、先輩日本からいなくなるんだ…


「先輩、良かったですね。先輩パリに行ったらうるさい後輩もいない事だし、大好きな服の事だけ考えられるじゃないですか?

私も休みの日に遊びに行こうかな…そん時は 色々な場所に案内して下さいね。

さてと、ちょっとパターン室に用事あったんで、失礼します。」


ここまで一気に話し、急いで部屋を出た。走って トイレに向かう…



ダメだ。持たない…涙がボロボロと溢れる。

先輩、ずっと側にいてくれるんじゃなかったの?何でよ…。

同居の話だって、尚更どうして誘うの?

私 先輩がいない生活なんて…



目の前が急に真っ暗になって

…意識を手放した。



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