* KING *
先週に頼まれていた仕事を何とか仕上げ 仲西さんにデータを送り チェックまで終わらせた。

後は工場で生地を裁断して縫製されるのを待つのみ。1週間後位には、サンプルが出来上がるはずだ。

一応 先輩に報告をしなきゃ…フロアに先輩がいるか確認したら居たので そのまま向かう。

「百瀬さん、依頼のパターンを先週末にあげたので データを工場の方に送りました。サンプル品出来上がったら 教えて下さい。チェックとシルエットの確認をしたいので…」

「へぇ意外だな…チェックとシルエット確認とか 熱心なんだ…パタンナーで自ら言って来るのって 俺初めてかも…」

「安藤ちゃん、そのシル検の時 俺も呼んでよ…モデル誰か必要?Mサイズなら柚ちゃんに頼もうか?」

「そうですね、瑞木さんお願いしてもいいですか?また日にちがわかりましたら、連絡をメールで下さい。よろしくお願いします。」

「頼もしいパタンナーだな。仕事がスムーズに進む気しかしないよ。百瀬良かったな…」

「ああ、どんなサンプルが上がるか お手並み拝見とするか…」

クスッと少しだけ口角を上げて笑う先輩は やっぱり昔の微笑みの王子を彷彿させる…

格好いい。悔しいけど顔は超絶一流なんだ。性格に難ありだけど…

「では、失礼します。」

気分良く部屋に帰ろうとした私に 先輩が紙を渡してくる。

何?と思いながら受けとる…アドレスと携番が書かれている?

顎で持っていけとジェスチャーされ 仕方なしに持ち帰るけれど…顔は 絶対動揺して赤くなっていたはずだ…

先輩どうして 私の心を乱す事ばかりするんですか?わざと?何で?

ドキドキと暴れる心臓を 納めるべく トイレに駆け込み 小さなメモを大事に携帯ケースにしまう。

初めからどう足掻いても 心は既に 先輩に捕らわれていたと認めるしかなかった…



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