* KING *
部屋に入ると ソファーに座らされ ドライヤーで髪を乾かす先輩。

テーブルには 二人分のお酒とおつまみが用意されてるあたり 私の帰宅待ちだったのが直ぐにわかる。


「///先輩、そんなに私が帰るのを待ってたんですか?」

聞かずにはいられなくて、思わず聞いてしまった。


「///悪いか?」


悪かないけど…でも何でかな?


「今日パリに出向の話の後 お前おかしかっただろ?俺も中々お前に話せなかったから、帰ったら話をしたかったんだ。」


バレてたんだ。もしかして私の気持ちもバレてる?


「ちなみにパリには何年行くんですか?」


「はっきりとわからないが、2~3年は戻って来れないと思う。俺が居ないと淋しいか?」


「私じゃなくって、先輩が淋しいの間違いでしょ?」


「ハハ、杏はやっぱり面白いな…パリには悪態をつく後輩はいないだろうし。」


「先輩、私もパリに連れて行って下さい。」


思わず素直に出てしまった言葉。もう後にはひけない。


「ああそうだな。俺からも上に申請出してんだよ。だけど中々OKもらえないんだよな。」


嘘…。先輩申請出してくれてるの?ポロリと涙が零れる。


「ん?杏そんなに嬉しいのか?」


「///違うし。パリにも出没するデーモンが…と思ったらびっくりしちゃったんです。」

「デーモンって?ハハ、それじゃあ杏はエルフだな。

杏、お前はいつでも外に飛び出せる準備をしておけ。圭には内緒だぞ。」


今日は驚かされてばかりだけど、先輩はちゃんと 私の居場所を守ろうとしてくれてる事がわかり安心した。

まだまだ 実力もセンスも先輩には追い付けないけれど、私もっと頑張ってみせる。

憧れのパリで 海外でも通用するワールドワイドなデザインを発信出来る様になりたい。

先輩に負けないより 先輩の横に恥ずかしくない人に…


「先輩 明日からも どんどん鬼的に仕事させて下さい。私、鬼には負けない自信 最近付いて来たので、よろしくお願いします。」

自分で自分のお尻を叩く。これ、かなりMかもしれないけど、先輩の側にいられる1ヶ月間を無駄にしない。

私に出来る事は全部しておきたい。自分の未来の為に…




< 161 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop