* KING *
会議室2に入り私はいきなり

「先輩どういう事か ちゃんと私にわかる様に説明してください。」

「ハハ…おいおい いきなり熱いな…」

バンッ。机を叩きつけ

「ふざけないで!本人に確認やら承諾なんか 普通取りません?」

「ああ、勝手に話を進めてすまない。少し前から考えてはいたんだ。昨日杏の話を聞いて やっと俺もやりたい事が見えた。だから悪いけど 杏に拒否権はない。」

勝手に決めて 拒否権はない。私の意見はどうでもいいんだ?

「杏、俺の昨日の話覚えてるか?」

「昨日の?」

「ああ 二人で世界を変えるって話だよ…」

「それが、今日の話のブランド?」

「そうだ。この前の5点のサンプルも試作品で、検討しなきゃならないけどな…」

「〝COLOR〟ブランドコンセプトは…色で変わる自分だ。人はいつも同じ落ち着く色(スタイル)をどうしても着たがる。それをチェンジさせたくなる服を作る。流行り色ではなく、自分コーデが出来る物を。

杏はその自分コーデ、ブランドの顔だ。杏には杏にしか着れない服がある。誰にも文句は言わせない。お前らしくなるために 俺にこの服を作るパートナーとして頼む…」

「先輩。言ってる事はものすごく素敵で、私もそんな服を作りたいです。だけど私がブランドイメージとかモデルっていうのが 問題なんですが…」

「昨日のシル検の杏を見て お前がいいと思ったんだ。中々そんなピッタリのブランドイメージなやつなんかいない。それにすごく似合ってた。」

先輩は誉めるって事を普段しないのか、今ちょっと顔が赤い…

「イメージモデルとかの自信が全く持ってないんですが、大丈夫ですか?」

「俺と一緒に作りたいか 作りたくないかのどちらかだよ…」

「物を作る自信ならあります。先輩…生意気な私でもいいのなら、よろしくお願いします。」

「上等だよ。杏よろしくな…」

先輩が手を差し出して 握手を求めてきたから手を出した。グイッと引かれて抱きしめられ 頭を撫でられる。

「ありがとう、杏。頑張ろうな…」

ドキン、ドキン…

先輩はズルい…私はコクンと頭を下げるだけで精一杯なんだから、生意気な口さえもその時は出なかった…

飴と鞭を上手く使い分ける上司の顔の先輩に 私は上手く手懐けられていくのであった…



< 33 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop