* KING *
私がフロアに入ると ざわついた。だけど、先輩が私を迎えに来て

「朝礼始める前に、話があります。昨日まで安藤は自分の姿を偽って過ごしていました。だけど、今日のこの姿が本来あるべき安藤です。それと、COLORの専属モデルも彼女自らがします。何か不明な点があれば 申し出て下さい。今後とも安藤の事を よろしくお願いします。」

誰かがパチパチと拍手しだして、フロア全体から拍手された。

私は言葉にならなくなって、ただただ頭を下げて、みんなの前で挨拶をしただけだった。

パターン室に入ると、みんなが集まってくる。

「安ちゃん、良かったね。百瀬チーフ格好良過ぎて 惚れそうだったよ…」

柚ちゃんが 素早く私に近付き言う。

「安ちゃん、ビックリするくらいモデルさんだね。超綺麗で素敵。」

「安ちゃん、ずるい。俺惚れそう…」

と、室長までも興奮して えらい騒ぎになっている。

だけど、あのタイミングで先輩の言葉はみんなを黙らせる絶対的な強いパワーを感じ、私はやっぱり先輩は凄いと思った。

会議室で 先輩と一緒になった時にお礼を言うために少し緊張する。

「先輩。朝礼の時、ありがとうございました。私 今日頑張って この姿で来て良かったです。」

「ああ、当然だろ?俺を誰だと思ってる?
つまんないいざこざや 嫉妬なんかに お前を潰されたくないからな。やっと見つけたんだから。なんか文句言うやつがいたら、絶対直ぐに言えよ。俺が守るから…」

///ちょっと待って…先輩キャラ崩れが起こってます…相手は私です。誰かと間違ってません?

余りにも恥ずかしくて 悪態をつく事も出来ない私に 先輩は…

「ほら、ぼぉ~とすんな。今日も忙しいから ちゃんと働けよ。俺の邪魔だけはするなよ。」

と、やっぱりいつもの先輩に戻っていて、安心した。

「はい、先輩より働く部下がいて、先輩は幸せ者ですもんね。」

「お前なぁ…この資料を広報の所に渡して 確認よろしく。お前これから大変だぞ。だけど早く慣れろ。」

先輩は先の私の事もちゃんと頭にあるようで ちょっとだけ 私に優しくしてくれる。

「先輩の側で鍛えられている私なので、大概の事は 辛抱出来ると思います。鬼、悪魔、大魔王 兼任の超絶怖い人が…」

「はいはい、わかったから早く行けよ。お前 俺どんだけ人間扱いされてないか…」

先輩にはいつも強気でいたい私の せめてもの反撃。先輩には負けたくないの…



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