* KING *
ドアスコープを覗くと 不機嫌極まりないイケメンがいる。

やっぱり先輩で 何で私の家にくるの?と思う。

「お前 要るなら早く開けろよ…。」

私の近所さんに対する気遣いは 全く持ってなしの態度に腹を立てながらも 早く開けないと通報されそうだ。

ガチャと扉を開けると、何も言ってないのに、勝手に入り込むこの男。

「はぁ。疲れた…余計な労力を使わすな…。」

呆れてポカンとしていたら

「客が来たら いらっしゃいと言って もてなすのが、普通常識じゃないのか?」

はい?何で勝手に来て おまけにズカズカ上がり込んだ人をもてなすのか 私には到底 そんな事は出来ないんだけど…

「無視かよ、お前。今日の事 どういうつもりか説明して欲しいんだけど?」

「あの今日、今じゃないと駄目なんですか?私、今日はもう誰とも話したくないです。」

「あ?それ俺に通ると思う?」

「ってか、帰って下さい。明日会社で話しますから お願いします。」

「何だよそれ?今日は話せないのかよ…」

「はい。明日です。」

「俺がわざわざここに来たのに?」

「私が呼んだ訳ではないので、速やかにお引き取り下さい。」

「え?お前は一緒じゃないのか?」

「はい、別行動でお願いします。」

「え?俺1人で帰れって?」

「もちろん…」

「わかった。今日はお前が我が儘言うから 俺が泊まってやる…杏もその方がいいだろ?先にシャワー借りるな?服を貸せ。あるだろ?」

あるわけないし、色々あり得ない…びっくりした時 人は何にも言葉を発する事が出来ないという事を初めて経験した。

とりあえず 携帯で圭さんに連絡を入れる。

「もしもし…」

「杏~。私泣きそうよ…。明日は絶対会社に居てよ。もうウザイったら 凱人大概よ…もぅ私いやだからね。もしかして、凱人側にいるの?」

「はい、さっき私の家に突然乱入して来て、今シャワーをしに行ってます。何も言ってないのに、泊まる気満々で困っています。」

「あら~でも仕方ないわね。今日1日杏不足で 凱人息出来なかったみたいだし、今から存分に甘えさせてあげて!今日私本当に疲れたら また明日ね!」

ピッと音がして 電話が一方的に切られた。

あっ…バスタオルと着替え用意しなきゃ…
脱衣場に用意して部屋に戻るが…圭さんの話では 先輩は息が出来ないとか 全く意味不明なワードばかりで頭がぐちゃぐちゃになる。

先輩は一体何を考え 行動したいのか、さっぱりわからない。


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