無意確認生命体
5月29日(土)
26.
「え~とぉ~、日本史は54ページまでが範囲だから……プリントは……ここまでか……」
「うぉ~い! 何やってんだ! 助けろそこのお馬鹿娘~! ――あ、ほらほら! え? このおもちゃ? はい! がらがらがら~」
「で、……現国は一日目だから明日勝負かけて……」
「こらー! 聞いてんのか美智ー! ちょっと! 有樹《ゆうき》ちゃん泣き出しちゃっふぇ、ひ、ひらい! やめへ! うーひひゃん! ひらい、ひらい!」
「あー! ちょっと後にして。多分お腹でも減ったんでしょ。しぶちん、そのちょっぴりサイズが貧弱なのでいいから、吸わしてやっといて」
「うっはひ! いだっ! ……くぅ。ゆ、有樹ちゃん。おもちゃはこっちだよ。私のほっぺは引っ張らないでね~? ――そんなの出るわけないでしょ! ってゆうか余計なお世話だ馬鹿ッ! ――あ、あ、あ! 有樹ちゃん、落ち着いて! 駄目だって! ちょっと美智! 美智ィーッ!」
「……んもー。しょうがないなぁ。まったく、しぶちん、キミはあたしがいないとなんにも出来んのかネ」
「黙れこの育児放棄野郎! さっきからアンタが私に任せっきりなんでしょうが! これじゃ話が違うぞ!」
「失敬な! これは放任主義と言ってもらいたい!」
「もういいから! 早くミルク作ってきて! 誰かついててあげないとすっごい泣いちゃうんだよ。私、ひとりで抱いたまま作るなんて無理だから!」
「へいへ~い。――くっくっく。いいママさんになれそうですなぁ、しぶちん」
そう言ってやっとこさ立ち上がり、台所へ消えていくネグレクトギャル。
くっそ~! こいつは~。
人の気も知らないで……。