無意確認生命体
「ん~。そりゃあ、志田は親しい間柄だしネ。親身になるってのはあたしもわかるよ? うん。アンタが付き合ってないってんなら、それも信じてあげよう。でも、しぶちんが男に対して、昔っから異常なほど頑なに壁作ってるの、あたしは知ってるよ。年頃になってもオシャレしないのだってそうだけど、根っこのトコにその壁があったの、あたし、気付いてたんだよ? ……なのに、志田に対してだけは、その壁を感じない。少なくとも、長年一緒にいるあたしには、ね。ほれ。それは自分でも、もう気付いてるんだろ?」
私は呆然としながら、美智が話すのを聞いていた。
――そう。
確かに美智の言うとおりだ。
私は志田に対してだけ、他の男と同じ警戒心を持つことが出来ない。
……そうさ。
あいつにだけは、私はどんなに心がけても油断を見せてしまう。
だから?
だから何だっていうんだ?
それがイコールで、私があいつに好意を持っていると、美智は言っているのか?
それこそ、お笑い沙汰じゃないか。まだあの『親睦会』から、ひと月も経っていないんだぞ?
油断こそすれ、例え相手があいつだろうと、隙なんか見せたりはしない。
ふたりでいたのだって、それはあいつが欲望を優先する人種じゃないとわかってるからだ。
それに――私が、そもそも私みたいな奴が、そんな普通の人間が抱くような情感を、持ち合わせているわけが……ないじゃないか。