無意確認生命体
「なんでいなんでい! しぶちんは泣き虫さんだな! うりうり! さー、有樹が寝てるうちに、勉強するぞ! 試験前なんだ! 好いた浮いたはその後でいい! 今はもう考えんでよろしい!」
私の頭を撫でていた手が、いつの間にか、げんこつに変わり、ぐりぐりと押さえつけられる。
「……うく……じ、自分から振ってきた話じゃん! 私を泣かせた責任とれ!」
「くっくっく。しぶちんはあたしのものなのさ! だから怒らすも泣かすもあたしの権利!」
「痛い痛い! それやめろ! 身長が余計縮んじゃう!」
「なに~? それならば、もっとやってやろう。うりうりうりうり!」
「や! やめて……! ゆ、有樹ちゃんが起きちゃうよ!」
それで、私たちのいつも通りの騒がしさが戻ってきた。
結局私は、今志田に対して抱いているこの感情にどういった答えを求めたものか、判断がつけられなかった。
――何故、突然涙が零れてきたのか、も。
これが、美智の言うような好意なのか、そうではないのか。
その判断は彼女が言うとおり、もう少し時間をかけて考えよう。
私はとりあえず、それを棚に上げておくことにした。