無意確認生命体

月曜日、テスト一日目。

テストが終わり、花壇へ行ってみると、志田は用意周到にも、コンビニ弁当を持参してきていた。

ようやく包帯が取れた志田は、

「利き腕が使える!」

と、最初大喜びで弁当を頬張っていたが、半分ほど食べたところで私になにも食べるものがないことに気付いたのか、残りを食べろと勧めてきやがった。

初々しいと言うなかれ。

私は男の子との箸の使い回しや弁当の食べかけをもらう、なんて経験がこれまでになかったのだ。

当然、私はそれを断った。

が、志田はことのほかしつこかった。

「それじゃ、力が入らん」

だの、

「食事を抜くダイエットは良くないってハナシだぞ」

だの、果ては、

「これで足らないんなら、もう一個買ってきてやろうか?」

と、全然的外れなことまで言ってきた。


まったく。

変なところ鋭いくせになんでこういうときに鈍いんだろうかこいつは。


私は別に潔癖症なわけじゃない。

実際、美智がかじりかけのパンなんかをくれた時には平気で食べていた。

だけれど、この時の相手は志田だ。

柏木をフッた時の言葉を使うのなら、志田はもはや、私にとって「興味のある」相手だった。

これを"好き"とイコールで考えるのは早計だとは思うものの、とりあえず、そんな相手から弁当の食べかけをもらうのは、"拒絶"と言うよりは"恥ずかしかった"だけなのだ。

……まぁ結局、根負けした私は、そのお弁当を食べることになってしまったのだが。


くそ、きっとあのとき私の顔は耳まで真っ赤だったに違いない。

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