無意確認生命体
6月4日(金)
28.
「ぐあっ! なんじゃこりゃあ」
翌日の朝、目覚めた私は顔を洗うために洗面台まで来て、思わずそんな独り言を漏らしてしまった。
鏡に映る私の姿……というか髪は、某少年漫画の金髪超人化現象よろしく、見事なまでに地球の引力に逆らい、直立状態になっていらした。
梅雨になり湿度が上がるこの時期には、私の髪は度々これに近い状態を朝になると形成されておられる。
さらに、眠っている時の私は、このような髪型の制作に協力的だ。
積極的に自分からゴロゴロ転がっているだろうし、そりゃあ髪だって存分に振り乱しているに違いない。
いやそれにしたって、ここまで酷いのは珍しかった。
……なんだこれ。
前髪まで全部はねて、おでこも全開じゃないか。
迂闊だった。
今朝がここまでジトっとした陽気になるってわかってたら、昨日の晩は髪をしっかり乾かしてから寝ただろうに。
これ、水で濡らすぐらいでどうにかなる状態じゃ、ないよねえ……。
――私は鏡に映る放心した表情の逆髪女《さかがみおんな》と一分程睨み合った後、シャワーに入ることを決めた。