無意確認生命体
弁当なんか作らなければ、買えばいいって、そんな簡単な答えに火曜日の時点で気付いていれば、テストで失敗したりしなかったんだ!
昨日の晩、しっかり髪を乾かしていれば、それがなくても朝からシャワーなんか浴びなかったら、さらに言うなら、それでも、朝からパニックに陥らなければ……、今のこんな醜態はなかったんだ!
美智や浅瀬さんが、朝から私なんかのために、わざわざ朝のHRに遅刻することも!
美智が泣くことも!
浅瀬さんが自分のハンカチを汚すことも!
おばぁがせっかく朝から作ってくれた、
……違う!
作らせてしまった朝ご飯を、全て便器なんかに吐き出してしまうことも!
全部なかった!
……あぁそれから、今朝のこの醜態は柏木たちにも見られていたかもしれない。
せっかくひと月前に蒔いた不安の種をみすみす枯らせてしまうような、この無様な姿を!
……これじゃあきっと、私がチッポケな何の後ろ盾も力もない、気に病むに足らない、ただの平凡な存在だと勘づかれてしまったことだろう。
なんて間抜け!
どこまで救いようがないんだろう!
それも今日みたいな大事な日に限って!
ごめん美智。
ごめん浅瀬さん。
ごめんおばぁ。
ごめんなさい――お母さん。
「……ごめん、美智……ごめん、浅瀬さん」
「だから、近江さん。謝らなくてもいいよ。さ、保健室行こ?」
「う……うう、うっく……うう」
……私はさっきと同じように、ふたりに両肩を支えられて、保健室に連れていってもらった。