無意確認生命体
「相変わらず、近江は貧弱だね~」
美智たちから事情を聞いた保健の持田《もちだ》先生は溜息まじりに言った。
「すみません先生。そんなワケなんで、雌舞希にベッド貸してやってください」
「はいはい。こんな青いつらで来られて追い返すなんてしないわよ。ハイ、わかったから。アンタらふたりは教室に戻んなさい。もうとっくに始業ベルは鳴ってるのよ。早く戻らないと一限目に間に合わなくなるわよ?」
「はい、すみません。それじゃ、よろしくお願いします。近江さん、無理しないでゆっくり休んでね」
「また、あとで様子見に来るから。じゃ、先生。失礼します」
ふたりはそれで保健室を後にした。
「――それにしても……。先週が生理で、今週はひと足早い夏バテ? 朝からランニングも結構だけど、自分の限界ってのをもうちょ~っと考えなさい」
「すみません……」
「あらら……。今日はまた一段と元気ないのね~。そんなに落ち込むことないわよ。アンタが貧弱なのは今に始まったことじゃないんだし。それに、今年度はまだ三回目よ? 生理以外で来たのは、二年生になってからは初じゃないの?」
……こんなことを言われているが、私は別に病弱というわけじゃない。
ただ、一年生の頃から月一回の生理の際には、お約束のようにここのベッドを借りていたので、常連ではあった。
そのおかげで、この保健室の持田先生とは親しくなり、お昼にここへ昼食を持ってやって来ることが、一年生の頃には何度かあったのだ。
それをこの人は、こんなふうに他人が聞いたら誤解を招きそうな言い方をしたのだった。
「はいコレ、体温計。一応計っときなさい。ベッドはいつもの特等席へどーぞ」
体温計を受け取り、保健室奥の、白いカーテンで周りを囲まれ、外から目隠しされている二台のベッドから、いつも使わせてもらっている窓側の方を借りる。
そして体温計をわきに挟み、横になった。
頭はまだ自分の不甲斐なさを責め足りない様子だったが、あいにく体はよっぽどくたびれていたのか、私はそのまま、すぐにまどろんでいってしまった。