無意確認生命体

「そんじゃ、この話はこれで終わりだな。ん、顔色も悪くないみたいだし、それ見りゃ、とりあえずアイツらは満足だろ。――あ、そうだ。ちょっといいか雌舞希」

「え、なに?」

「この本のさっき読んでたとこで、訊きたいコトがあるんだけど、いいか?」

そう言って志田は、私が起きるまで読んでいたらしい文庫本を示す。

「う~ん……。まぁ、私に答えられることなら。で、なに?」

私がそう答えると志田は、

「ココのページなんだけどな、ちょっと見てみて」

と、手に持っていた文庫本のページを広げ、私に手渡してきた。

私はその開かれたページを最初から黙読する。



―――。



私が一分ほど読んだ頃、志田はマジメな顔でおもむろに質問をぶつけてくる。


「なぁ。その三行目の"オーガズム"って……、どんな具合なんだ?」


直後、『バシッ!』と志田の顔面に私の手元にあったはずの本が炸裂していた。

私が放り投げてやったのだ。


「知るか馬鹿ッ! たまに真剣になに読んでるのかと思ったら、官能小説じゃんかコレ! 高校生がこんなもん読むな! 不健全! ってゆうかセクハラ!」


顔を沸騰させまくし立てながら、まくしたてる。

おい! なんだその、『なんでオレ、怒られてんの?』みたいな不思議そうな顔は!

……私がそう思った次の瞬間――、


「――ぷっ! あっははははははははははッ!」


――同時に響く、笑い声の二重奏。

響いてくるのは私の後ろ。

ベッドを囲むカーテンの向こう側。

私と志田は突然聞こえてきた笑い声にびっくりして、その発生源に振り返る。

すると、「サーッ」と勢いよくカーテンが引かれた。

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