無意確認生命体
「あ、そうだ先生。さっきのプリント、早くしぶちんに渡してやってくださいよ」
「あぁ、そうね。近江、気分はどう? さっき、ボーッとするとか言ってたけど、大丈夫なの?」
……ホントに最初っから私たちの会話は筒抜けだったらしい。
別にやましいことは何もないけど、なんかちょっと恥ずかしいな。
「あ、はい。それも志田くんと話してたら、だいぶマシになりました」
「――そう。アンタ寝ちゃってたから教えとくわ。37度9分、コレ朝の体温ね。平熱、とはちょっと言えないわね。早退出来るように手配しておいたけど、どうする?」
「先生! そんなの確認するまでもないですって!」
「これ、本人の意思確認ね。辻、別にアンタが早退するワケじゃないのよ?」
「雌舞希。今日は昼過ぎから雨になるってハナシだぞ。特に理由がないんなら、早めに帰ったほうがいい」
保健室の窓から外を見る。
空はくもっていたが、今ならまだ歩いて帰っても家までは保ちそうだ。
「……そうですね。すみません先生。それじゃあ私、今日は早退させてもらいます」
「うん、そうね。あたしもそれがいいと思うわ。じゃ、はいコレ」
先生は机からプリントを取って私に手渡した。
「ソレに欠席理由と名前書いて、来週中に各授業担当の先生にサインもらって提出しなさい。新井先生にアンタのことはもう伝えてあるから。もう、このまま帰っていいわよ」
「あ、ありがとうございます。ご迷惑おかけしました。それじゃ、せっかくですので、早いとこ帰らせてもらいます」
そう言って、私はプリントを四つ折りにしてベッドから降りる。
……と、ちょっと立ちくらみ。
それを美智が支えてくれた。
そしてその時、そっとこんな耳打ちをしてきた。