無意確認生命体

そんな不安が顔に出ていたのか、それが美智には私が落ち込んでいるように見えたのだろう。


「あはは。美智、気持ちは嬉しいけど、私はノーマルだから。美智が男の人になってくれたら考えてあげてもいいけど」

無理矢理に軽いノリを作ろうとしてみる。

「うわ! キッツイなー! アンタ自分からコクッといて、あたしにまず変わることを要求するってワケ? 生意気な!」

それを察してかはわからないが、美智はそのままの軽いノリで返してくれた。

「あれは美智が勝手に聞いてただけでしょー? 私は別に告白のつもりで言ったんじゃないよー」

「お! コイツ! こっそり相談なんかして、あたしへの想いを詠みつづってたクセに開き直りやがったな! ……ふふっ。まぁいいや。ほれ、カバン。あたしの親切を断ったからにゃあ、せめて、さっさと帰って休んでもらわなきゃ、許されないんだからな!」

「あ、ありがとう。うん。それじゃ、さっさと帰って許してもらう。――先生、今日はありがとうございました。失礼します」

「――ちょっと近江」

私が挨拶して保健室を出ようとすると、先生に呼び止められた。

「はい? なんですか」

振り返ると、持田先生はこころなし険しい顔で私の顔を見ていた。

そして「……はぁ」と脱力気味に溜息をついて、

「余計なお世話かもしれないけど、せっかく聞いちゃったんだから焼かせてもらうわ。初々しいのも、そこまでいくと痛々しいわよ? そのぐらいのコトで落ち込まれたんじゃ、志田クンが可哀相なんじゃないの?」

なんて言ってきた。

「先生、私、別に落ち込んだりしてな――」

「あの先生。しぶちんの事情知りもしないで、そういうこと言わないでやってください」

私が平静を装ってどうにかごまかそうとしているってのに、美智は途中で割り込んできて余計な"こっちの事情"を漏らしてしまった。

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