無意確認生命体
「ま、まぁ……そりゃ、ドーベルマンが勝つんじゃねぇの? なに? なぞなぞ? ……ちょっと、今そうゆうのなしにしてよ。こっちはマジで訊いてるんだぜ? そんなんではぐらかさないでさ――」
「はい正解」
柏木くんはまだ何か言っていたが、話を進めるため強引に割り込む。
「そうだよね。チワワじゃドーベルマンに勝てるわけないよね。喧嘩にさえなるかどうか。――じゃあ、もうひとつ例え話ね」
そこで私は一拍区切ってこう言った。
「雄猫と雌犬の間には、子供が生まれると思う?」
きっと彼にとっちゃバカみたいであろう私の問いかけ。
御馳走を目の前に待ったをかけられたみたいな顔で見ている柏木くん。
「んなもん、生まれるわけないだろ! 何なんだよ、さっきから! はぐらかすなよ。訊いたのは俺だろ? はっきり答えてくれよ!」
……ふぅ。王手だ。
私だって、こんなのは疲れる。早く終わらせたい。
「私は貴方の質問にはちゃんと答えた。それに柏木くん、貴方自身でも答えを出したよ。私と貴方では勝負、――つまり恋愛なんてことにはならない。そして、私と貴方の間には生まれるものが何もない。それなら、私に恋人がいるかどうかは関係がないでしょ? ……だから、ごめんなさい。私なんかに構ってないで、他の人を探してください」
私は言い終わって牛乳パックを机に置き、わずかに頭を下げる。
「――なっ! なんだそれ!? 意味わかんねぇよ! そんなんで納得いくか! なんで犬やら猫の話が俺たちのことになるんだ。関係ねぇだろ! 俺、お前が好きなんだよ!! お前は? 俺のこと、嫌いなのか?」
柏木くんは煙に巻かれた気がして苛立ったのか、ちょっと感情的にまくし立てた。
……疲れるなぁ。