無意確認生命体
……なんだか、私はどんどん役者に磨きがかかるなぁ、と思う。
――本当はあんな事件、全然関係ない。
あれ以来、危機感が私の中で増したのは事実だけど、私が男に注意しなくちゃならないのは、あれに始まったことじゃないんだから。
でも、下手なことを口にして、さらに余計な追及を受けるのはゴメンだった。
ただでさえ今の私は失敗が続いてるせいで冷静さを欠いている。
これ以上、私の深層にまで迫られるようなことがあったら、……そうなったら、私は言い逃れられる自信がない。
美智があの事件のことを先生にふってくれたのは、ある意味キレイな逃げる言いわけになったので結果オーライ、というコトにしておこう。
「いえ、いいんです。美智の言い方もちょっと大げさでしたし」
「大げさなんて、そんなコトないでしょ雌舞希! 柏木は関係ないにしても、大事件には違いないじゃん! 部外者なんて……ホント、アンタよく無事だったね……。ほんと……よく頑張ったね」
「そうよ近江。あたしもさっきはああ言ったけど、そういう事情があるんなら、辻が引率して帰るのも見逃してあげてもいいって思ってるぐらいよ」
先生の言葉に、美智は敏感に反応する。
……前言撤回。
やっぱり、全然結果オーライじゃなかった。
まずい。なんとかしなきゃ……。