無意確認生命体

「はぁ……はぁ。……あ、アレ? あの、青い屋根の」

学校を出て、歩くこと約30分。

持田先生は息切れしながら、50mほど先に見えてきた私の家を指さした。

「あ、はいそうです。……大丈夫ですか先生? 肩、貸しましょうか?」

「……ひぃ、ふぅ、……え? ……な、何言ってんのよ! あたしが送ってあげてる側なのよ。アンタが肩貸してどうすんの!」

……どうやら2×歳には、この片道30分の上り坂は、なかなかきついものであったらしい。

「そ……それにしても……アンタ。朝からココまでの道を全力疾走? 馬鹿じゃないの!? これじゃ、倒れるのも無理ないわ。辻ならどうだか知らないけど」

「はい。どーせ馬鹿ですよ。自分でもそう思ってます」

「コレで雨まで降ったら、確かに結構ツライものがあるわね。辻がアンタにあれだけついて来たがったのも理解出来ない話しじゃないわ。というか、アンタ毎日ココを歩いて学校に通ってるんでしょ? はぁ~……。それだけでもう、あたしには考えられないわね。悪いことは言わないから、明日からは自転車通学に切り替えることをお勧めするわ」

「イヤです。あんなの、人が乗れる代物じゃありません。無理ですね」

「乗れない方が少数派でしょ。何? アンタ、自転車も乗れないの? ホンっトに鈍くさいのねぇ」

ぐっ! ……痛い。

見えないところを斬られた気分だ。

「そーゆう放っておけないところが、辻の母性本能をくすぐるんじゃないの?」

「な、何を言いますやら! 見ていて危なっかしくて放っておけないのは私の方です。私なんかに構うより、まず自分の身のまわりの世話をしっかりしてもらいたいもんです」

「あら、なにそれ? 互いに想い想われ? それじゃやっぱりアンタら相思相愛ってワケだ」

そんな馬鹿な話をしているうちに、家の前まで着いてしまった。

< 142 / 196 >

この作品をシェア

pagetop