無意確認生命体
30.
私がまだ5歳かそこらぐらいの頃、私はこの家ではなく、小さなアパートに父母と共に三人で暮らしていた。
そこでは父がいつも叫んでいて、それが私はとても恐くて、母にばかり懐いていた。
父は家庭には関心が薄く、朝になると仕事に出かけ、夜帰ってきても叫ぶばかりで、母とまともに話しているのは見たことがなかった。
同じように私にもあまり興味がなかったようで、話しかけても無視されることが多かったし、目にも入っていない様子だった。
そして――。
……初めてアレを見たのはいくつの時だったのだろう……。
夜中に母が父の"穴"として扱われている、あの恐ろしくて、不気味な「儀式」を見たのは――。