無意確認生命体
その日から母は毎日、父が出かけた後、私に「ゆうべは来た?」と繰り返すようになった。
その問いかけに、私はいつもNOと答え続けた。
母が泣き、父が叫ぶあの「儀式」は、私にとって、とても恐ろしいものだったので、どうしても見に行くことが出来なかったのだ。
そして母は私のその答えを聞くたびに、
「駄目よ、雌舞希ちゃん。もう『アレ』は、雌舞希ちゃんのためにやってるみたいなものなんだから。あなたが見に来てくれなかったら意味がないわ。せっかく、しんどい思いをして毎日がんばってるんだから。しっかり見て、もしもの時のための役に立ててくれなくっちゃ。いい? 周りには雌舞希ちゃんにとって怖い人がいっぱいいるのよ? だから、もっと危機感を持って生きるようにしなきゃ、駄目なのよ」
と、好き嫌いをする問題児をさとすような口調で言うのだった。
そして……この間にも、日に日に母はやつれていった。