無意確認生命体

そんなある晩。

眠っていた私は尿意を催してしまった。


トイレは、母と父がいる寝室のすぐ隣にあった。

そこまで行けば、寝室での物音は、はっきりと聞こえてくることだろう。

もしそれを聞いてしまえば、もう私は中を見てしまうに違いなかった。

幼い私には、父が母に何をしているのか、ふたりで毎夜、何をやっているのか理解することが出来なかったし、母が何故、私に毎日毎日、あの恐ろしい「儀式」を見せたがっていたのかもわからなかった。

だけど、母が日増しにやつれていく原因が、あの「儀式」にあるんだということは感じられたのだ。

だからもしそうなれば、今度こそ父に母を泣かせるのをやめてくれるよう、泣きついてしまうに違いないと思った。


……それが、母の望んでいることとは違うとわかっていても……。


……私は我慢することにした。

もしあの部屋に行ってそんなことをしてしまったら、取り返しがつかないような気がして、それが恐くて、ずっと込み上がる尿意に耐えた。

そして、……とうとう耐えきれなくなり、布団の中で全て漏らしてしまうのだった。

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