無意確認生命体
そして、それは私の感じていたとおりだった。
あれだけ憎んでいたはずの「アイツ」は……、ものの一時間も話さないうちに、こんなにまで言いわけもきかないぐらいに、粉々に砕かれてしまったんだから。
「お……母さんは……私の……せいで、おかしく……なっちゃったんだ……」
「しぃちゃん?」
「なにを……言うんだ……、雌舞希」
「だって、そうだよ。……そうでしょ? 私が、お母さんを病院送りにした、元凶だったんだ」
「それは違う!」
「違いません! 私なんかが産まれてきちゃったから、お母さんの人生は狂っちゃったんです! 自分が一番悪かったのに! それを棚に上げて、お父さんが悪いんだって、勝手に決めつけて、思い込んで! 本当は私なんかに……お父さんが恨まれる筋合いなんて、全然なかったのに! それなのに……う……うっく、う……うう……うぁぁ……あぁぁ……!」
「し……ぶき……」
「――ねぇ。宗八、今日はこのぐらいで、帰ってあげてくれないかい。……おじぃも。やっぱり、ちょっと急すぎたんだよ……。病み上がりだし、この子だって、帰ってきて、突然こんな話し、聞かされちゃったら、気持ちの整理が追いつかないだろ……。とりあえず、あんたの話はちゃんと聞いてくれたんだから。ねえ。……きっと、それだけでも、この子にはひと苦労だったはずなんだよ?」
「……そぉう……だなぁ。……すまんかったなぁしぃちゃん。もうちょっと、しぃちゃんのことぉ考えてやるべきだった……。丁度良く早退けしてぇくるって言うんで、オレもちょっと、あせっちまったぁかもしれん」
「いや、母さん、僕が悪かった……。……くっ……本当に、つくづく自分がいやになるよ。あの頃から、少しも成長しないな……。もっと、話す順序ってものがあるだろうに……。さっきの言い方じゃ、雌舞希が自分に責任を押し付けられたと思ってしまうのも、無理はないよな……。馬鹿だな僕は……本当に……」