無意確認生命体
その後、私は自室に引きこもり、夕飯も食べずに膝を抱えて、ひとりうじうじと泣きはらしていた。
「梶原進学塾講師、近江宗八……。お父さん、塾の講師なんてやってたんだ。……どうりで声、おっきいわけだね……」
連絡先として手渡された名刺を見ながら、ひとりごちる。
みじめだった。
私が母から授かった使命だと信じていたものは、なんてことない、母が「私」っていう汚点を他人に悟られないよう用心した上での保身のひとつでしかなかったのだ。
お母さんは……、最初っから、私に愛情を掛けて育ててなんか、いなかったのだ。
よりによって、お母さんの誕生日にその本心を知れるとは、なんて皮肉なんだろう。
……でも、それじゃあ、愛情ってなんなんだろう……。
お母さんは一体どんな気持ちで、こんな私を育ててくれていたんだろう。